イラク日本人人質事件について


 米英などによる「有志連合」のイラク侵略軍と、イラク住民との戦いが激しさを増す一方です。
 その状況で、2004年4月8日、イラク日本人人質事件が起こりました。
 「Saraya al-Mujahidin(戦士旅団)」と名乗る犯行グループが、フリーライターの今井紀明氏、フリーカメラマンの郡山総一郎氏、ボランティアの高遠菜穂子氏を人質に取り、日本政府に以下の要求をして来ました。

 われわれイスラム教徒であるイラク人民の息子は、おまえたちへの友情と尊敬、真心を示してきた。しかし、不幸にも、おまえたちはわれわれの友情と真心を拒否し、不義理をもって応え、異教徒の米軍を補給面で支援し、兵士たちがわれわれの神聖な土地を侵し、汚すのを助けた。また、われわれの血を流し、子どもたちを殺した。だから、同じことをもって返答するのがわれわれの義務である。おまえたちとおまえたちの友情は歓迎されない。
 おまえたちはそうした立場でわれわれに戦争を宣言した。われわれは、おまえたちの3人の子どもはわれわれの武器の中にいると告げる。われわれはおまえたちに2つの選択肢を与える。おまえたちの部隊を撤収し、来た所に戻るか、われわれが彼らを生きたまま焼くかだ。おまえたちに与えられる猶予期間はこのテープが放映された日から3日間だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/specialfeature/iraq/より)

 私は事件とは関わりなく、イラク派兵は侵略であると反対してきました。小泉政権は「有志連合」を全面的に支持し、アメリカの要求に従って自衛隊を派兵しました。ですから、いくら「復興支援」を名目にしても、イラクに対する侵略を意味すると言わざるを得ないのです。
 ですから、一刻も早く撤兵すべしという主張は変わりません。彼等の要求の中にある、日本が米軍の侵略を支援したという指摘は理があると思います。しかし、結局非武装の人質を盾にした犯罪であり、逆に「テロに屈しない」と小泉政権に言わせやすくした、愚行です。
 一方、小泉純一郎首相福田康夫官房長官は、交渉の引き延ばしさえせず、あっさり自衛隊撤兵の要求を蹴りました。人質の救助に全力を挙げると表明したとはいえ、犯人がどこにの誰かさえ定かではない状況では、実質見捨てると言ったような物です。
 事件について、ネットのあちこちを見ました。その中で、ある程度予想はしていましたが、2ch当該スレッド(この他にも多数。イラク情勢板の本スレッドについては「☆日本人3人拘束事件の本スレ☆」で保管)やYahoo!掲示板の当該スレッドを見ると酷いことになっています。
 イラクに反対派ばかりいるのがおかしい? 危険地帯に出かけていったのは自業自得だ? 実は犯行グループと手を組んだ自作自演だろう!?
 そう、イラク侵略に賛成した人たちが、現地で復興支援に当たっているという話は聞いたことがありません。実質的な支援活動を行っている非政府組織の人間を罵倒し、自衛隊の派兵は一言も批判しようとしない。この事は逆に、自衛隊は復興支援ではなく、まさに戦地に赴いている侵略軍なのだとという裏付けと思います。
 被害にあったのは自己責任という批判はまだ分かります。しかし、犯人よりも「プロ市民」(職業運動家、という揶揄らしい)「左翼」であるという理由で人質となった3人をむしろ憎悪するという歪んだ態度。小泉政権と自分を重ね合わせ、国家、といえば聞こえは良いですが、実は「絶対に正しい自分」の気にくわない主張の持ち主は抹殺すべきという、おぞましい発想です。そのためには、「テロリスト」が殺してくれることを公然と期待して止まない。「自作自演」という主張は、そのための後付けに過ぎません。何しろ、犯人に人質を殺すよう挑発しているに等しいのですから。株安で6兆円吹き飛んだから人質の責任だ? 小泉政権の金融政策には何も言わない癖に。
 自らの手を汚さず、遠くで殺されるのを楽しもうというとんでもない発想のくそ野郎達が、残念ながら少なからず存在するようです。
 こんな連中のために殺されてたまるか!
 もう、気分が悪すぎます。入力するのも億劫なのですが、関連記事を載せておきます。
Hostage crisis dominates Cheney’s Japan trip
Japan's plea: Don't kill the hostages
Hostage crisis tests Japanese premier
Hostages put Tokyo in bind(いずれもアルジャジーラ英語版)
人質映像詳細、Windows Media Player版http://stream.tanteifile.com/download/tamashii/tamashii06/01.wmv
同、Real Player版http://www.euronews.net/popup.php?lien=stream1.euronews.net:8080/ramgen/new/cut/iraq_28902_1.rm?usehostname
イラク邦人人質:「ダッカ事件とは時代違う」−−福田官房長官(『毎日新聞』4/9夕)
イラク人質:「犯人グループに呼びかけ」 家族ら解放訴え(『毎日新聞』4/10)
3人の拘束現場、タクシー運転手が目撃(『讀賣新聞』4/9)
迫る期限、見えぬ素顔…邦人人質の犯行グループ(『讀賣新聞』4/10)
高遠さんのHPにアクセス殺到、掲示板閉鎖 人質事件(『朝日新聞』4/10夕。高遠氏非難の書き込み殺到という)
民主議員27人、自衛隊撤退を要求 小沢代表代行も賛同(『朝日新聞』4/10)
「3人はイラクの友人です」 外相、ビデオで解放訴え(朝日新聞』4/11)
産經抄(『産經新聞』4/10)
緊急直言  「今」、自衛隊は撤退すべきか(水島朝穂氏)
勝谷誠彦の××な日々。(4/8〜、10日付「戦後の「日本の最も長い3日間」。下から読まれたい。」の「昨夜高名なジャーナリストから今回の事件が自衛隊撤退を狙った自作自演の「芝居」ではないかとの指摘を受けた。氏の解説にはなるほどと思わせるところもあった。しかしもしそうだとすれば日本の市民運動というものはこれで壊滅する。」という下りが流布していたが、全文読むと勝谷氏自身は違う見解である。ただし、後日の日付で解決するまでは黙っておくという形で含みを残している)
眞悟の時事通信(西村眞悟氏。4/9付けで「日本人が犯人にそれを教えた。「効果があるぞ、やってみないか」とイラクにいる日本人が日本人誘拐という道具を使って自衛隊撤退を要求する手法を教えたというわけだ。」という説を書いている。人質による自作自演と主張しているわけではないが、自作自演説という形で流布させる者がいる)



イラク邦人人質事件リンク集(「それゆけ!!だよもん星」より。管理人は「自作自演の可能性は五分五分だが、日本人(赤軍?)が関与している可能性は高そうだ。」という立場)
World press despair over Iraq(英語。世界各地のマスコミの論調を取り上げているが、讀賣と産經が際だって強硬なことが分かる。この記事の読者は、日本のマスコミがこの二紙だけとは思わないで欲しい)
人質事件家族が特派員協会で会見 「迷惑と心配」謝罪(『朝日新聞』4/14。果たして彼等は罪なのか。この記者達は吊し上げる相手を間違えている)
取材拒否を申し合わせ イラク人質事件で政府(『共同通信』4/13。政府には大甘なマスコミ)
政府、毅然対応は不変 「テロには屈しない」自衛隊活動を継続(『讀賣新聞』4/11。一時人質解放声明の報せを受け、「要求を受け入れれば、『日本を脅せばいい』とテロリストが考えるようになると判断し、自衛隊を撤退させないと決断した。この決断で、テロリストは3人を釈放するという判断をした」と街頭演説で言った安倍自民党幹事長だったが…)
外国人拉致、急速に拡大 16カ国50人以上(『共同通信』4/11)
ファルージャで無差別攻撃、モスク空爆で40人以上死亡(『朝日新聞』4/7)
ファルージャで48時間停戦延長に合意(『讀賣新聞』4/14)
ファルージャの犠牲者たち(『アルジャジーラ』4/9を益岡賢氏が和訳、原文はhttp://english.aljazeera.net/NR/exeres/35D16627-E268-4ACE-B0E0-553C6624058D.htm
「人質解放!」(益岡賢氏4/11)
連合国の請負業者4人殺害 群衆、遺体引き回す(『共同通信』4/1。4人は傭兵会社ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルティング社の社員で、純粋な民間人ではなく、傭兵の彼等だけを狙い撃ちにしたのではないかともいう。ファルージャで惨殺されたのは、ただの“民間人”ではない!
4月の連合軍犠牲者70人に 武装勢力側700人死亡(『共同通信』4/11) http://www.geocities.jp/iraq_peace_maker/index.html

管理人 K・MURASAME       

4月16日      

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