国会発言録2(1999年4月29日〜1999年6月1日)

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この資料文字色の意味
発言者が、盗聴法反対派
  国会議員  参考人・その他
発言者が、盗聴法賛成派
  国会議員  政府委員(官僚)
  参考人・その他
その他
  本文中の注やその他の記述  以上に該当しない記事や引用者の注
*特に参考人の場合、色分けと言動が必ずしも一致しない場合があります。

 平成十一年五月二十一日(金曜日)
    午前九時三十四分開議
  出席委員
   委員長 杉浦 正健君
   理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君
   理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君

   理事 佐々木秀典君 理事 坂上 富男君
   理事 日野 市朗君
 理事 上田  勇君
   理事 達増 拓也君
      奥野 誠亮君    加藤 卓二君
      河村 建夫君    小杉  隆君
      左藤  恵君    笹川  堯君
      菅  義偉君    西田  司君
      望月 義夫君    保岡 興治君
      渡辺 喜美君
    枝野 幸男君
      福岡 宗也君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    木島日出夫君
      保坂 展人君
    鯨岡 兵輔君
 出席国務大臣
        法務大臣    陣内 孝雄君

 出席政府委員
        警察庁生活安全
        局長      小林 奉文君
        警察庁刑事局長 林  則清君
        警察庁警備局長 金重 凱之君
        法務省刑事局長 松尾 邦弘君
        公安調査庁長官 木藤 繁夫君
        国税庁課税部長 森田 好則君
        労働省労働基準
        局長      伊藤 庄平君
 委員外の出席者
        警察庁長官官房
        審議官     瀬川 勝久君
        金融監督庁長官
        官房特定金融情
        報管理体制等検
        討準備室長   本田 悦朗君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君

(中略)
○日野委員 私が通信傍受を盗聴と呼び、そして私は、通信の秘密を守るということは憲法の中でも最も大事な基本権の一つ、国民の権利の一つ、こう思っていますね、国家から通信の秘密を守り抜くという。しかし、私は、先ほどもお話ししたように、随分気を使っておられるということは認めるのですよ。だが、私としては不信感が絶対に抜けない。まず不信感を持ってこの法律を見る、こういう、私が長年培ってきた経験から私に植えつけられた不信感、これは決して抜けないというふうに思います。
 私、実は公安事件というものを随分やってまいりました。警備公安事件と称するものですね。その中で、随分いろいろな警察とのトラブルがありました。
 そこで、今度は警察のあり方について伺います。私は、この通信傍受ということを警察にやらせることは絶対できないんじゃないか、実はこう思っているんですよ。
 警察は大体、公安警備警察と刑事警察、こう分かれているわけですね。日本の警察は、非常に強く公安警備の方に傾いていると私は思います。公安警備に行った連中は出世をする。そして、一生懸命、警察全部が出世コースに乗ろうとするんですかな、公安の業務に熱中をするわけですな。そして、何か刑事警察の方を公安の人たちが、泥棒警察という意味なんですかな、泥警と称しているんですな。私、いろいろ話をしても、公安警察と警備警察との関係というのはそういう関係になっているようですね。
 そして、私は、こういう公安重視、警備重視の姿勢が一般刑事事件についての手抜きになっていやしないかなという、非常に強い危惧を持っています。皆さん、ずっとこのごろ起きた大事件をごらんになってください、刑事事件。未解決の事件というのがいっぱいある。非常に重大な事件で未解決、特に現金輸送車の襲撃だとか、それから誘拐なんかでも、まだこれは未解決でして、もうすぐ時効でございますなんというのが新聞紙面にも躍っているようであります。
 私、ここで警備警察というのは一体何をやっているのかということを聞きたいですね。ひとつ教えてください。警備警察の業務というのは何ですか。

○金重政府委員 先生、警備警察といいますか、警備公安警察と申しますか、その仕事についてのお尋ねでございますけれども、警察法の二条に定めております公共の安全と秩序の維持という責務を果たすために、暴力主義的破壊活動、集団不法事案等の取り締まり等を行っておるというのが仕事の内容でございます。
 例えば、極端な国家主義的主張に基づく暴力主義的活動に関する警備犯罪の取り締まりだとか、極左的主張に基づく暴力主義的破壊活動に関する警備犯罪の取り締まりだとか、テロリズムに係る組織犯罪その他これに類する特殊な組織犯罪に関する警備犯罪の取り締まり、外国人に関する警備犯罪の取り締まり、外国人または活動の本拠が外国にある日本人によるテロリズムに関する警備犯罪の取り締まりなどを行いますとともに、必要な情報収集、分析等を行っておるということでございます。

○日野委員 法律的に言うと、そうなりますね。そして、私は、それは必要なことではないなどと決して言いませんからね。非常に立派な、大事な仕事をやっておられるんです。その点はどうぞ誇りを持ってやっていただいていい。
 ただ、その手段、方法がかなり行き過ぎている。そしてまた、その手段、方法、こうこうこうやっていますよということを、ちゃんと誇りを持って、我々はこういう手段、方法を使っておりますということを言えばいいんですよね。ところが、隠して隠してそれを明らかにしないものだから、いろいろな憶測が出てくる。

(中略)
 ところで、そういう業務をなさるについて、いろいろな手段、方法というものはあるわけですね。情報収集をやられる。特に情報収集のときに、視察を行う、内偵を行う、聞き込みを行う、張り込みを行う、尾行をする。ここいらまでは通常の警察活動として、警察が好きな人は実は余りおりませんから、まあ不愉快だがしようがない、こう思っておるんですが、工作を行う、面接を行う。
 面接なんかも、いろいろな面接があるでしょうから、面接はいいとして、それから投入という方法を行う。これは、その団体の中にスパイを送り込む、それから虚偽の情報などを流して誤った行動をその団体にとらせるというような手法、こういうのもやっておられますね。それから、さあここが大事なところですが、盗聴をする。これは、人の話を聞き耳を立てて聞くということではなくて、盗聴器を用いて盗聴をする。このような手段、方法を使っておられるわけですね。いかがでしょう。

○金重政府委員 警察の情報収集活動でございますけれども、警察は、警察法に定められました責務を果たすために、国民の皆様から協力を得て、必要な情報を収集しておるということでございます。
 もとより、その手段、方法につきましては、法律の範囲内で必要かつ妥当な限度内において行っていると承知いたしております。

○日野委員 では、盗聴はやっておりますか。やっておりますね。
○金重政府委員 今申し上げましたように、私ども、警察活動については適法、妥当に行っておりますので、違法な盗聴行為というようなことは行っておりません。
○日野委員 これはちょっと古い本で、私も最近不勉強なものですから古い本を ちょっと引かせていただきますが、警備警察研究会というのがありますね。そこで つくった本で、「警備警察全書」というのがありました。御承知ですか。
○金重政府委員 申しわけございません。ちょっと、突然のお尋ねですので、承知いたしておりません。申しわけございません。
○日野委員 いや、そういう本があるんです。そこで、いろいろなことが書いてあって非常におもしろい本なんですが、こういったいろいろな方法があるということが書いてあって、特に、秘聴器と書いてある、秘密に聞く器械ですな。盗聴器とは言わない、秘聴器。その秘聴器を使用する場合は特に注意が必要である、こう書いてあるんですな。
 この間、保坂委員が、盗聴器についての警察とメーカーとの取引についていろいろ述べておりました。あれは、やっておりませんとあなたは言うし、どこに行ってもそれは判で押したようにやっておりませんと言うけれども、これはもう公然の秘密なんで、だれもあなたの言うことを信じていないんですよ。盗聴をやっているということは、もうこれは事実なんだ。
 共産党の、どなたでしたかな、緒方国際部長さんのところを盗聴された。それは、そっちこっちで盗聴器が見つかって、盗聴された人がその盗聴器を外して持っていったら、窃盗だなんといって、今度は検察庁がこれを起訴しまして、そして裁判の結果どうなったかというと、これは違法性阻却事由があるというので無罪になったなんてぶざまなこともあったんですよ。
 やはりこういうのは隠れてやることです。それで、さっきも挙げましたね、「警備警察全書」。これには、情報活動が行われているということが判明したときは、既にその警備情報活動は失敗である。つまり、盗聴器が見つかったなんということじゃなくて、ははあ、だれかにおれはつけられているぞとか、だれかに情報収集の対象にされているぞということを対象になった人がわかったときは、その警備情報活動は失敗だ、こう書いているんですな。まあ、それは警備の側からしてみればそうでしょう。
 それから、警察大学校、ここでは講習が行われて、住居侵入の仕方、窃盗の仕方、信書開封の仕方、ここには盗聴の仕方の講習があったかどうか、ちょっと私ここのところ今よくあれですが、私は、恐らくしているんだろう、こういうふうに思います。
 それで、こうやって、情報収集をいろいろな手段でやるわけだ。私は、盗聴も入っている、これは断言します。今までの情況証拠、それから直接的な証拠、いろいろそろっていますから、これは盗聴をやっているわけですが、まあ、いいや。
 こうやって集めた情報、これはどのように整理されるんですか。どこで、だれが、どのように整理するのか。

○林(則)政府委員 警察では、犯罪の予防、鎮圧、捜査、交通の取り締まり等の公共の安全と秩序の維持という責務を果たすため、必要な限度で個人に関する情報等も収集し管理をしておるところであります。
 そういったものにつきましては、例えば、例を挙げますと、個人情報ファイルとしては、各種警察事務を適正に遂行するなどのために、二輪車防犯登録ファイルとか、家出人ファイルとか、あるいは風俗営業管理者ファイル、あるいは運転者管理者ファイル、そういった形で現在保有をしております。

○日野委員 いろいろな団体についても個人についても、そういうファイルはあるわけですな。これは当然です。私も、これをしてはいかぬなんて言いません。これは必要です。そして、すぐにでも引き出せるように電子化もしておいて、それは結構だと思うんです。
 警備資料整理規定というのがありますな、警備資料整理規定。これは、警備関係の情報を整理しているわけですね。そして、それにはどんな内容の記載がありますか。

○金重政府委員 警備資料整理規定なるものがあるかどうかについて、ちょっと今私、承知いたしておらないわけでありますけれども、一般に警察は、先ほど刑事局長も御答弁させていただきましたように、犯罪の予防及び捜査を行うという責務を有しておりますから、その責務を遂行するという立場から、いついかなる場合にも有効、適切な対策を確立する、そのための各種資料を整備しておるということはございます。
○日野委員
(中略)
 それでは、通信傍受法の内容に入ってまいります。
(中略)
 傍受の令状をとる要件がございますね。私は、この令状そのものは新しい捜査の形での令状だと思うのですね。今までの裁判所の令状、そして憲法の定めている令状主義、それから刑事訴訟法が定めている令状とは大分趣を異にするものだと私は思います。これは全く新しい一つの捜査の形態なのであって、これについては、憲法の二十一条と新しい形態ということを考えてみると、私はこれは許されないのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
○松尾政府委員 先生お尋ねのように、今回の電話傍受の令状でございます。
 これは、今までの刑事訴訟法等で規定されております捜索あるいは差し押さえあるいは逮捕令状等ございますが、新しい分野の令状を設けるという意味で新しい制度ということは御指摘のとおりでございますが、憲法との適合性の問題、これまでの答弁でも申し上げましたが、慎重に、憲法上の権利の保障、保護ということも十分考えまして、調和のとれた制度として法案に盛り込んだつもりでございます。したがいまして、憲法違反の問題は生じないというふうに考えております。

○日野委員 今おっしゃるとおり、(盗聴法)第三条には「別表に掲げる罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由がある場合において、当該犯罪が数人の共謀」云々、こう書いてありますね。それで、次の号には「別表に掲げる罪が犯され、かつ、引き続き次に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合」、そしてあとは「数人」と書いてあるわけですね。そして、イの項には「当該犯罪と同様の態様で犯されるこれと同一又は同種の別表に掲げる罪」、「当該犯罪の実行を含む一連の犯行の計画に基づいて犯される別表に掲げる罪」。それから、第三号もございます。「禁錮(こ)以上の刑が定められている罪が別表に掲げる罪の実行に必要な準備のために犯され、かつ、引き続き当該別表に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において、」云々、こうあるわけですな。これは将来の犯罪でしょう、二号、三号は、将来の犯罪。
 私は、刑事犯罪というのは、やはり行為が行われたときにそれに対する対処を行うべきことが刑罰法令に定められているのであって、将来起きるかもしれないという蓋然性、それがいかに高度なものであろうと、これについて対処すること、これは刑罰の本義にもとる、私はこう思います、それについて事前に、もう既に捜査を行うということは。刑事訴訟法で何かちょこっと一条つけ加えているようですが、そんなことで私は済む問題ではない、こう思っているんですよ。今、これによって日本の捜査のあり方というものが大きく変更するんだ、私はこう思う。そう思いませんか。局長さん、どうですか。

○松尾政府委員 まず、お答えの冒頭で申し上げておきたいことがございますが、将来行われる犯罪ということを委員が表現されております。これだけの表現ですと、それを聞いております国民にとって、何だかわからないけれども、将来起こるかもしれないという犯罪も想定して非常に幅広く電話傍受がなされるのではないかという誤解が生じることになろうかと思いますが、この法案が考えておりますことは、そうしたこととは全く別意の、質的に違ったことでございます。
 それをちょっと例を挙げながら今申し上げたいと思いますが、ただいま先生のお尋ねありますこの法案第三条一項の二号、三号には、二号を見ますと、「別表に掲げる罪が犯され、」これは現実に犯罪があるということであります。「かつ、引き続き次に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合」ということを要件として掲げているわけでございます。次のところの、二号にはイとロとありまして、「当該犯罪と同様の態様で犯されるこれと同一又は同種の別表に掲げる罪」というようなことがございます。
 まず、この点でございますが、例を挙げますと、かなりの量の例えば覚せい剤の密輸事犯が現にありました、これは警察が捜査し、あるいはその他麻薬取締事務所がかかわることもございますが、そういった捜査機関がその犯罪を探知してこれの捜査を開始しております。大量の覚せい剤でございますと、それが死蔵されるということはないのでありまして、当然アンダーグラウンドの市場に出る。つまり、覚せい剤の所持、譲渡あるいは隠匿ということが犯罪として犯されるということは社会的には当然考えられますし、捜査機関としても、そういった犯罪が継続して行われるということについては当然警戒を持ち、それをどう防圧するか、どう抑止するかということも含めて検討、捜査の対象とすることになります。
 そういったことになりますと、大量の覚せい剤が密輸入されました、その後のいろいろな想定される行為が、ここに書いております「引き続き次に掲げる罪が犯されると疑うに足りる」という状況でございます。しかも、それは「十分な理由がある」ということでございまして、これも、従来の逮捕状請求ですと「相当な理由」ということでございましたが、これを「十分な」ということでかなり厳格にさらに絞りをかけていくということでございます。
 これをもう少し平たく言いますと、密輸入とその後の頒布行為あるいは売買行為というのは、社会的に見れば一連の大量の覚せい剤の密輸、それに伴う販売行為ということで、社会的には一連の行為というふうに見得るのだろうと思います。
 つまり、この第三条二号に掲げておりますのは、そういった一連の犯罪行為が現に想定されるということでありますと、確かに先生のおっしゃるように、密輸入後の行為はこれから行われる行為ということでございますが、電話傍受の対象として、それはこれから行われる行為であるから対象にならないというのはいかにも問題があろうかと思います。つまり、憲法上の通信の秘密に対する保障等を考えましても、こういったところの電話傍受を行うということは、やはり全体的な調和の中では許容される捜査手法ということに御理解がいただけるのではないかと思っております。
 それから、次に先生の御指摘の、第三条の一項三号でございます。
 これは、法文の表現といたしましては、「禁錮(こ)以上の刑が定められている罪が別表に掲げる罪の実行に必要な準備のために犯され、かつ、引き続き当該別表に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合」だというふうな規定の仕方をしております。
 これはどういう問題かといいますと、例えば蛇頭のケースを今度引かせていただきたいと思います。
 外国から多数人の集団密航をさせよう、我が国で不法に就労させ、あるいは売春等を行わせることも現実にはあるわけでございますが、そういった計画のもとに、その実行の準備のために、まず多数のパスポートの偽造が行われるというケースもございます。
 このケースを考えてみますと、パスポートの偽造ということは、当然外国のパスポートでございますから我が国の公文書ではございませんので、これは私文書の類型の話で、刑法的には有印私文書偽造罪の成立があるということになります。つまり、ここにあります「禁錮(こ)以上の刑が定められている罪が別表に掲げる罪」、つまり蛇頭の集団密航罪の実行に必要な準備のために犯される、この場合でいいますとパスポートの偽造がそれに当たるわけでございます。引き続きその集団密航事案が実行に移されるという「疑うに足りる十分な理由がある場合」でございますので、捜査の実情等を考え、また他方で、確かに憲法上の保障とされています通信の秘密の保障ということとの兼ね合いを考えましても、かかるケースについては、やはり電話傍受は許容されてしかるべきである。それをまた、こういうふうに規定することが全体の調和を乱し、あるいは憲法違反になるものというふうな理解には到底ならないものと考えている次第でございます。

○日野委員 局長さん、私に、将来の犯罪だ、将来の犯罪だ、こういうことをおっしゃったけれども、今の局長さんの答弁は、極端な犯罪を言っておられるんですね、あなたは。それは、覚せい剤、蛇頭を挙げればわかりやすい。そういう膨大な、大きな組織でそういった犯罪を犯していく、これはもう目につく。
 しかし、私、ここで注意しなくちゃいかぬのは、「当該犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。」これはもう組織犯罪だと。「数人の」というのは、法律で言う概念では二人以上でしょう。

○松尾政府委員 数人とおっしゃるのは、二人以上でございます。
○日野委員 では、一応ここで御休憩いただきます。
○杉浦委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十時四十一分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時十分開議

○杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。日野市朗君。

○日野委員 継続させていただきます。
 さっきは、数人というのは二人以上だというところまででしたね。
 ところで、蛇頭だのそれから麻薬だの、そういった薬物の販売組織というと、二人なんということはないわけですね。ですから、私はここで何が言いたいかといいますと、細かな、二人なんといった数字までひっかけられる、我々の言葉で言うとひっかけられる可能性があるんだということをひとつ注意を喚起しなくちゃいかぬということが一つであります。
 それからもう一つ、別表に掲げる罪ですが、これはかなり広範ですよね。法令名だけでも二十法令、その中には刑法は一つの法令として数えるわけですが、刑法だけでも随分かなりの罪名が並ぶわけです。それを見ますと、こんなものまでと思うようなものも随分ありますよ。特に放火罪なんというのは内気な人が起こす犯罪だなどと言われるわけですが、こんなものまで入れる必要があるのかねと思うようなのもありますね。こういうのを見ますと、これだけ多くの罪名がずらっと並ぶ。そうすると、盗聴の要件を備える範囲というのは非常に広がるのではないか。ここのところを私は非常に心配をいたします。

(中略)
○菅(義)委員 ぜひ、早くその法律(団体規制法)を制定して、オウムの活動を規制し、オウムに対して国民が抱いている脅威や不安というものを一日も早く取り除いていただきたいなというふうに思っています。
 オウムの一連の犯罪の原点でありました坂本弁護士の殺害事件、実は私の選挙区であります横浜で起こったわけであります。これは当初の段階から、オウム真理教が関与している、こういううわさというのは地元でもありました。当然捜査当局もつかんでいたと思います。もしあのときに通信傍受の法律ができていたらこんなことにはならなかっただろう、こう思っているのは私だけではないと思っております。
 結果的には、オウム真理教のような閉鎖的犯罪組織についてはなかなか内部情報が得られない。そして、それが松本のサリン事件になって、そして世界に例のない地下鉄サリン・テロに至るまで、結果として何の手も打てなかったんですね。組織犯罪の捜査では、麻原に代表されるように、下部の実行犯ではなくてトップにねらいをつけなければ何事も解決しないわけであります。
 三法案の中で、特に通信傍受に関し、こうした閉鎖的犯罪組織の対策を行うため には極めて有効な手段である、私はこう思っております。この三法案が成立するとオウムに対してかなりの抑止的な効果があるだろう、こう考えますけれども、これについてはいかがですか。

○松尾政府委員 先生お尋ねの中に坂本弁護士一家殺害事件がございました。公判における冒頭陳述等で述べられている事実を見ますと、坂本弁護士一家殺害事件では、松本智津夫と実行行為者との間で、犯行直後の結果報告あるいは死体遺棄場所、方法についての相談、本部帰還の指示等、電話で頻繁に連絡がとられております。
 また、オウムの事件の中では、仮谷さんとおっしゃる公証役場事務長の逮捕監禁致死事件というのがございます。この事件を見ましても、実行行為者との間の共謀、打ち合わせ、あるいは犯行準備等の指示、あるいは犯行直前の合流場所の連絡、拉致した旨の連絡と逃走のために乗りかえる車両の準備指示、警察が犯行直後にオウム真理教青山道場の捜査を始めようとしている旨の連絡など、これは携帯電話を多用いたしまして頻繁に連絡を行っているということがございます。
 ただいま先生のお尋ねのように、オウム真理教のような閉鎖的な組織の中では、この実例に見られるように、通信傍受ということが非常に効果的に使われるわけでございます。
 現在審議中の組織犯罪対策三法でございますが、組織的な犯罪に適切に対処するために有効と考えられる刑事法制の整備を図ろうとするものでございまして、オウム真理教による一連の犯罪が敢行された当時に本法案のような組織的犯罪対策法が整備されておりましたならば、組織的な殺人等に対する一定の抑止効果が期待できたほか、今申し上げました通信傍受によりまして、早期に実態を解明し、被害を最小限に抑えることはもとより、時系列的に考えますと、例えば地下鉄サリン事件などについては、あるいはその発生を未然に防止できた可能性もあったものと我々は考えている次第でございます。


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