第44回衆議院議員総選挙の総括(前編)

 

2005/9/15(イラスト追加9/25) 最終更新2005/11/3

 一面が総選挙「完全敗北」バージョンになりました。当分このままです…。「くずおれる女」は当サイトのイメージキャラ? の村雨恭子さんです(©覇王、今のところは先方の黙認状態)。戦績によって、おおむね次の5パターンを想定していました。

村雨恭子・完全勝利Ver(11.9KB)a,完全勝利 盗聴法反対派で過半数達成。盗聴法賛成派(与党+民主党内自由党系+田中眞紀子氏以外の保守系無所属(郵政造反による自民公認漏れ含む)+国民新党+新党日本+新党大地の計を仮に見倣す)で過半数割れ。
村雨恭子・一応勝利Ver(10.3KB)b,一応勝利 与党(自民+公明の公認のみ)過半数割れ。
村雨恭子・敗北善戦Ver(11.7KB)c,敗北するも善戦 与党過半数達成、自民単独過半数には届かず、なおかつ与党で与党絶対安定多数(269議席)未満。
村雨恭子・大敗北Ver(15.7KB)d,大敗北 与党絶対安定多数達成、自民単独過半数に届かず。または与党絶対安定多数未満だが自民単独で過半数達成。
村雨恭子・完全敗北Ver(12.5KB)e,完全敗北 与党絶対安定多数達成、しかも自民単独で過半数達成。

 これでも実際の結果から見れば大甘でした。結果は自民単独絶対安定多数達成なのですから。
 解散当初はaは無理でもbは十分チャンスがあると思いました。ところが、選挙戦が始まると自民優勢の報道。それでも、最悪でも自民党の「刺客」と反対派の共倒れがあり、与党支持からの揺り戻しもあるだろうからdの展開だろうと思い、自民過半数は何とか阻止できればと言うのが本音でした。あまりの酷い結果にこのまま不貞寝を決め込みたい。
 そういうわけにも行かないので……。

 各党の得票数、得票率、獲得議席を見て行きましょう。
第44回衆議院議員総選挙各党得票・議席(小選挙区)
政党得票数得票率当選者議席率前回得票数前回
得票率
前回
当選者
前回
議席率
《与党》
自由民主党32,518,389.91847.77%21973.00%26,089,326.59743.85%16856.00%
公明党981,1051.44%82.67%886,507.2021.49%93.00%
保守新党----791,5881.33%41.33%
与党計33,499,494.91849.22%22775.67%27,767,421.79946.67%18160.33%
《郵政造反新党・
無所属》
国民新党432,6790.64%20.67%
新党日本137,1720.20%00.00%
無所属(郵政反対)2,064,4463.03%134.33%
造反新党など計2,634,2973.87%155.00%
《野党・その他》
民主党(合計)24,804,786.73936.44%5217.33%21,814,154.23036.66%10535.00%
民主党(自由党系)2,937,4684.32%41.33%2,885,7074.85%124.00%
日本共産党4,937,375.0307.25%00.00%4,837,952.8108.13%00.00%
社会民主党996,0071.46%10.33%1,708,672.1302.87%10.33%
新党大地16,6980.025%00.00%
世界経済共同体党1,5570.002%00.00%6980.001%00.00%
無所属の会----497,1080.84%10.33%
自由連合----97,4230.16%10.33%
諸派----50,8260.09%00.00%
無所属(その他)
(前回は全ての無所属)
1,176,0751.73%51.67%2,728,1184.58%113.67%
野党(大地除く)・
郵政以外無所属計
31,915,80046.89%5819.33%
野党・無所属+郵政造反
(前回は全ての野党・無所属)
34,566,79550.78%7324.33%34,620,659.17058.18%11939.67%
与党+郵政造反+大地36,150,58953.11%24280.67%
合計68,066,291.924100.00%300100.00%59,502,373.969100.00%300100.00%
無効票1,458,340---1,687,433---
当日棄権者数33,458,589---41,036,526---
当日有権者数102,985,213---102,232,944---
投票率67.51%---59.86%---
盗聴法賛成派合計24882.67%20367.67%

*無所属票の端数は0.540ですが内訳の算出は時間の都合で略。そのため無所属票を含む計算は合計以外一致しません

 「その他」に分類した無所属にも与党系(基本的に自民公認漏れ)がいるので実際は与党票はもう少し多くなります。(ちなみに当選者5人のうち、中村喜四郎・江田憲司の2氏が与党系、田中眞紀子・徳田毅・下地幹郎の3氏が野党系。とはいえいずれも非自民を表明しているが保守系である)
 とはいえ、とにもかくにも与党以外で闘った候補者の得票率は46.89%(大地を含めると46.91%)。さらに郵政民営化六法案に反対し、やむなく自民党を出て闘った自民系候補(ただしこれ以外で国民新・日本に加わった候補含む)の得票を加えるなら、50.78%と過半数を超えます。彼らは自民系とはいえ、小泉内閣の政策に反対して選挙に挑んだのですから、国民の選択は小泉内閣には無かったことになります。野党+反小泉派は50.78%の得票で73議席。与党は49.22%の得票で227議席。これはあんまりだ、篦棒(べらぼう)というものです。

 議席数は、紛れもなく与党、分けても自由民主党の圧勝です。これは間違いありません。どれだけ私のような者が切歯扼腕しようと、与党圧勝は認めるしかありません。こういう事が起こる選挙制度で候補を立てて闘ったのですから、承知の上という事になります。しかし、有権者の選択はそうでは無い。このことも絶対に見過ごしてはなりません。
 このカラクリは、もちろん小選挙区制によるものです。小選挙区制は、議席比率が得票率の三乗比になるとされ、「三乗法則」の異名があります(ただし地域政党の進出や選挙協力によってはこの限りではない)。基本的に第一党有利で、しかもまともに勝負になるのはほとんどが2位までの候補のみとなるため、第三勢力の支持層まで勝ち目のある二強に流れてしまいがちです。したがって、元々強固な地盤を持っていた造反組は別としても、第三勢力で議席を得るのは極度に難しくなります。第三勢力以下への支持を切り捨て、強引に二大政党に、しかも第一党に大きなボーナスが付くのが小選挙区制です。自民党の勝利は、もちろん前回より640万票を上積みした効果もありますが、前回の小選挙区議席は168。小選挙区制のカラクリが無ければ、前回の獲得議席はあり得ませんし、ましてや今回はです。
 ……とはいえ、この制度が続く限り、そして野党第一党の民主党もまた小選挙区制論者である限り、自民の牙城を崩すのは難しいと嘆息させられました。自民党が比較第一党である限り、今後どれだけ支持を減らしても、小選挙区制の魔術で政権に居座ることができるのです。なぜなら、小選挙区はそれぞれの選挙区で1位になれば勝利したことになるからです。
 それにしても。今度こそ自民を野党に叩き落とし、盗聴法廃止への足がかりができる。こういうところでの自民の回復力の強さ、二枚腰三枚腰の粘り強さは半端ではありません。古くは1980年の衆参同一選挙、1990年の衆議院総選挙、2001年の参議院選挙と、ここで負ければ野党転落か、少なくともその大ピンチという場面でことごとく大勝しているのです。この選挙で民主党が一時勝利を皮算用していたのも、自民党と造反組が潰し合えば、自分こそ小選挙区制の魔術で大勝できると見込んでいたからに他なりません。ところが結果はご覧の通り。
 今の自由民主党は、国民の多数の支持を得ている政党ではありません。それは間違いありません。それなのにどうして勝つことができるのか、それは………。
 比例区はさらに与党票が少ないのですが(9/16逆でした。お詫びして訂正します)、このことも含め、時間の都合で続きは明日にします。とはいえ、このことについては詳しい解析がいくつか既に出ています。これも、明日まとめて紹介します。
(9/30追記:自由党系民主党候補の小選挙区当選は9ではなく4でした。また、盗聴法賛成派の小選挙区当選者に自由党系を含んでいなかったので、244から248となります。お詫びして訂正します)

(11/3追記:自由党系民主党候補の一覧は、「自由党支持者」の「2005衆院選」に拠りました)

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