最高裁判所判事国民審査とは


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 衆議院総選挙と同時に行われる、最高裁判所判事国民審査。今年6月25日で第18回目になりますが、選挙の陰に隠れ、あまり注目されていません。「次の選挙でたたき落とす〜」と言われても、衆議院選挙ほどぴんと来ないのではないか、と思い、急遽解説を書く事にしました。通常の選挙と異なり、告示(衆議院総選挙と参議院通常選挙は「公示」)後でも運動が可能なので、こうして急ぎ造った次第です。
 小難しそうな呼び名ですが、要するに「最高裁判所の裁判官に相応しくない人を国民がたたき落とす」投票です(憲法79条2項)。三権分立の一角を占める司法(後の二つは、立法と行政)の頂点に立つ最高裁判所の裁判官を国民が審査する、というわけです。
 最高裁判所裁判官は、任命されてから最初の衆議院選挙と同時に行われる国民審査に掛けられます。そこで罷免されなかった場合は、以後10年ごとに再び審査をする事になっています。
 もっとも、最高裁判所判事の定年は70。40歳以上ならば任命される事は可能なのですが、実際には任命された時に既に60歳を過ぎているため(今回一番若い町田顯氏でも63歳)、過去二度審査を受けた裁判官はいません。

 相応しくない人、というのは、普通ならば様々な判決の内容から判断するのですが、このページで指す「相応しくない人」とはもちろん盗聴法を推進する手助けをした人、具体的には、寺西和史判事補の戒告処分を支持した人です。何故それが「盗聴法推進」になるのかはリンク先の文を読んで戴く事にしまして、国民審査の仕組みの説明を続けます。

 投票権があるのは国会選挙と同じ、20歳以上の日本国籍を持つ者です。
 他の選挙では、投票者が候補者の名前を直接書きますが(自書式投票)、この国民審査だけは、はじめから投票用紙に名前が書いてあり、その名前の上に×を書くと罷免を可とし(辞めさせたい)、何も書かないと罷免を不可(辞めさせたくない)すると意思表示した事になります(記号式投票)。これで×、つまり不信任が、有効投票の過半数を超えるとその裁判官は罷免、つまり辞めさせられます。
 ちなみに信任のつもりでも○を書くと無効票にされるのでご注意下さい。×を書くか、何も書かないか、です。
 もっとも、これまで国民審査で判事の首が飛んだという例はありません。×を書かれた割合は、最高でも15%ほどです。
 では、今回は………。選挙に選挙公報があるように、国民審査にも国民審査公報があるのですが、この公報からは、寺西判事補戒告処分事件についての記述が抜け落ちています。そこで、「次の国民投票でたたき落とす」裁判官として挙げた4名の他、他5名の裁判官の見解(戒告反対1、まだ最高裁判事になっていなかったため、裁判自体に参加せず4)も挙げて置きたいと思います。また、覚醒剤密売に対する裁判所の検査令状を取った上での(盗聴法によるものより条件は厳しい)盗聴は合法か、という裁判もあり、この判決に参加した裁判官については、それについての判断も記述しました。
 国民審査に対する、判断材料として活用いただければ幸いです。
 なお、下の裁判官の出した判決をもっと詳しく知りたい方は、「最高裁ウオッチャー」(金森善正氏)などが参考になります。「最高裁判所ホームページ」も余裕があればどうぞ。

 下の表での記号の意味は、「寺西判事補戒告支持」「電話盗聴は合法」と判断した(多数意見)のは●でたたき落とす対象、「寺西判事補戒告反対」「電話盗聴は違法」と判断した(少数意見)のは○で、落選運動の対象外です。空白は不参加、−は当時最高裁判所判事では無かった事を表します。
 なお、別項の「たたき落とす裁判官」に指名した方は、姓名が赤字になっています。
 また、「最高裁判所判事国民審査の書き方」も参考にされて下さい。

〈国民審査を受ける最高裁判所判事一覧〉
(表示は国民審査での告示順)
番号 氏  名 年齢任命日備考寺西
戒告
密売
盗聴
 1亀山 継夫
(かめやま つぎお)
661998[平成10]年
12月4日
検察官出身 
 2大出 峻郎
(おおで たかお)
671997[平成9]年
9月24日
行政官出身 
 3町田 顯
(まちだ あきら)
632000[平成12]年
3月22日
裁判官出身
 4金谷 利廣
(かなたに としひろ)
651997[平成9]年
10月31日
裁判官出身
 5奥田 昌道
(おくだ まさみち)
671999[平成11]年
4月1日
学者出身
 6山口 繁
(やまぐち しげる)
671997[平成9]年
3月10日
最高裁判所長官・裁判官出身 
 7元原 利文
(もとはら としふみ)
691997[平成9]年
9月8日
弁護士出身
 8梶谷 玄
(かじたに げん)
651999[平成11]年
4月21日
弁護士出身 
 9北川 弘治
(きたがわ ひろはる)
651998[平成10]年
9月10日
裁判官出身 

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