まずは、盗聴法成立翌日(1999年8月13日付)の各紙の盗聴法成立を伝える見出しをご覧下さい。
「盗聴法が成立」(『朝日新聞』) 「傍受法・改正住基法が成立」(『中日新聞』) 「通信傍受法が成立」(『毎日新聞』)
「通信傍受法が成立」(『日本経済新聞』) 「自自公賛成 組織犯罪3法も」(『讀賣新聞』) 「組対3法が成立」(『産經新聞』)
上に行くほど反対、下に行くほど賛成の色が強くなります。横棒が境界線です。なお『中日新聞』は中部地方の地方紙で、『東京新聞』はここの系列です。このうち、『日経』は一面二番目、『讀賣』は「改正住民台帳法が成立」の下に縦書きでこの見出しが続いています。他は全て一面トップです。
このうち、「組織対策3法」というのが最も政府寄りの表現。次いで「通信傍受法」、そして最も嫌がっているのが「盗聴法」です。政府は「組織犯罪対策」を強調したいので、こういう順序になったわけです。
う〜ん、こうして見ますと、見出しだけで新聞の立場が丸分かりです。「盗聴法」と呼んだのは『朝日』だけ。慎重派の『中日』『毎日』、賛成派ながら両論併記に近い『日経』は「通信傍受」と呼び、大賛成派の『讀賣』『産經』は「組織犯罪対策」を強調しています。
ちなみに政党機関紙は次の通り。日刊の共産、公明はいずれも1999年8月13日付です。
「盗聴法成立 自自公が強行」(日本共産党『しんぶん赤旗』日刊) 「盗聴法を許さない」「反対意見封殺する自自公 採決なき強行採決を糾弾」 (社会民主党『社会新報』1999年8月20日号、週刊) (未見)(民主党『民主』月刊) (該当記事無し)(さきがけ『通信さきがけ』月刊)
(未見)(改革クラブ) 「通信傍受法など成立 参院本会議」(公明党『公明新聞』日刊) 「「国旗・国歌」「通信傍受」など 重要法案が続々成立」(自由民主党 『自由民主』1999年8月24日号、週刊) (未見)(自由党)
県立図書館にあるはずの社民の機関紙が無いのは党側の寄贈に頼っているかららしい。いかにも事情が感じられてもの悲しいですが、結局国立国会図書館で閲覧しました。『自由民主』でも、「組織犯罪対策」という表現を使っていないのが意外でした。(もっとも、衆議院を通過したときは「組織犯罪対策三法案」と呼んでいますが。『自由民主』'99年6月15日号参照)
新聞の傾向には、大まかに分けて『朝日』『毎日』『中日(東京)』と、『讀賣』『産經』という区分けが出来ます。前者を左派、後者を右派と一応呼びます。『日経』は後者寄りですが、経済紙色が強いので別扱いします。
最近は、何かにつけて右派に勢いが増しています。これは特に『朝日』がソ連や中国など共産主義諸国に好意的であったことから、ソ連崩壊などで風当たりが強くなったため等があります。また、他の新聞は「中立」を一応標榜しているのに対し、特に『産經』は旗色を鮮明にしており、分かりやすいという理由も挙げられます。この問題に深入りすると長くなるので、本題行きます。
盗聴法案でも、この傾向ははっきりと現れました。右派が積極的に賛成論を張ったのに対し、左派は両論併記で慎重な論議を呼びかける程度で、なかなか反対に踏み切れなかったのです。
盗聴法案が世に出たのは『讀賣』'96年6月17日号の記事が最初です。ちなみに、この前日に与謝野馨代議士(自民)がフジテレビの「報道2001」に出演した際、組織的犯罪対策のための刑法・刑事訴訟法の改正を主張しています。与謝野氏はこの後の動きを見ましても、盗聴法成立のキーパーソンと言えます。そして同年10月に正式に発表されました。この時『朝日』では、「人権絡み懸念の声も」としつつも「国民的議論が不可欠」と、法案の必要性は認めています。('96年10月6日号)なおこの時衆議院選挙直前でしたが、どの党も(共産党は言ったかも知れませんが)この選挙では法案に触れていません。ようやく『朝日』が『「権力」が聴いている』と題して盗聴法案反対を主張し出したのは'99年の5月21日。『毎日』や『中日』はもっと消極的でした。
正直言って、反対を言い出すのが遅すぎました。実は、これ以前にも私はネット上で「盗聴法案反対」と題するバナーを見かけた事があります。そして実際、ネット上で盗聴法案の危険性を呼びかけた方たちはたくさんいました。しかし、現実のマスコミでまず動いたのは週刊誌であり、月刊誌であり、そして夕刊紙でした。一般の新聞やテレビは一番最後だったのです。
政府側のマスコミ対策もあります。法務省が「盗聴法と呼ばないで」と呼びかけたり('99年6月1日)、法務省幹部や与謝野馨通産相等が主要マスコミをわざわざ訪問して盗聴法案の趣旨や提案までの経過を説明して回ったりしたのは前に触れました。('99年6月4日より数日間)
他にも、この時期にオウム真理教(現:Aleph)のことが大きく報道されたのも怪しい。と言いますのは、オウムの活動は以前からの事で、いかにも「組織犯罪対策のため盗聴法が必要」と思わせたいのが見え見えだからです。しかもこの法案が実は役立たずなのは、何度も強調したところです。もっと怪しいのが野村沙知代氏が選挙に出たときの経歴詐称騒動。盗聴法が通った途端、騒ぎが静まったのは何だったのですか。しかも、野村氏が出馬したのは新進党からなのに、当時同党の党首だった小沢一郎氏には、ほとんど批判の手は伸びなかったのです。これでは目くらましと言われても仕方がありません。せめて「サッチー騒動」の半分でも、ワイドショーが盗聴法を取り上げていれば、あるいは阻止出来たかも知れないのに。
追い討ちを掛けるように、TBSで不祥事が連続して起こりました。『噂の眞相』'99年8月号にすっぱ抜かれた「芸能人乱交パーティー」にTBS局員が関わっていたのを始め、同局の岡田之夫前報道制作局長が痴漢で処分を受けました。まずいことに岡田氏は同局の番組「NEWS23」の担当でした。「NEWS23」は、インターネットに関する解説には問題があるものの、盗聴法には一貫して反対した番組です。7月12日にも神保哲生氏がアメリカの盗聴法の実態をリポートしたのですが、これに法務省が動きました。松尾邦弘刑事局長が、「報道は明白な誤りを犯し、国民の間に誤解を生じさせるものである」とTBSに抗議したのです。
例えば、「日本では、傍受の際の録音が終わっても捜査当局が聴いていいことになっている」と言うディレクターの発言が間違っているというものです。しかし真意は「録音後も聞けると解釈できる余地がある」というもので、確かに盗聴法にはどちらとも書いてありません。(第二十二条)
他にもこの抗議にはおかしな所があるのですが、それは宮崎学氏ホームページの「国怪フォックス通信」を参照されて下さい。
http://web.archive.org/web/20021025011527/http://www.zorro-me.com/miyazaki6/txt/k-fox/k-fox17-0713.html(一部の画像は消えています) です。しかし弱り目に祟り目のTBSは全面的に謝罪してしまったのでした。
さらに、今度は自民党が保坂展人代議士(社民)盗聴疑惑の件で、テレビ朝日に抗議しました(第2章反論17参照)。これらの与党側の行動はじわじわと効いて来たようで、「NEWS23」でも法務省の見解を紹介していましたし、また「盗聴法」という表現も避けるようになりました。ようやく打って出た「反盗聴法キャンペーン」も尻すぼみとなってしまったのです。
一方賛成派は、徹底的に政府の援護射撃に回ったという印象です。「組織犯罪対策の法だから、一般人は巻き込まれる心配はない」('99年5月26日号の両紙)を初め、保坂氏盗聴疑惑が『朝日』『毎日』といった盗聴法反対マスコミへの垂れ込みから始まったことを挙げて「どう考えてもこれは不自然そのものの出来事ではないか」「あまりのばかばかしさに、不謹慎にも笑ってしまった」(『産經新聞』'99年7月9日号「産經抄」石井英夫)と盗聴反対派の仕業と疑ってみたり、「盗聴法」という表現を非難したり(『産經新聞』'99年8月13日号「主張」他多数)。どの主張も間違っているのは今まで何度も述べました。また保坂氏事件で『朝日』『毎日』に垂れ込んだのも、『産經』に垂れ込んだ所で無視される可能性が大きいでしょうから当然の話です。また『讀賣』'99年6月18日号では、「捜査に幅広い活用」として欧米の盗聴事情を紹介しています。しかしこの中には、例えばドイツではマスコミ関係者とジャーナリスト、国会議員は傍受の対象外であること。アメリカでは盗聴の81.2%が犯罪と無関係のものが聴かれていて、しかも「テロ対策に必要」という意見への反論に、「過去十三年間で、放火・爆弾・武器使用など、テロに類する犯罪と対象を広げても、盗聴はわずか〇・二%」
(http://web.archive.org/web/20041025201455/http://www.monjiro.org/tokusyu/tochou/news/news.html
『盗聴法ニュース』3号 バリー=スタインハード弁護士)といった、不利な情報は完全に無視しています。
あるいは、'99年5月21日の衆議院法務委員会で自民党の菅義偉氏の「通信傍受法案が有れば坂本弁護士一家殺害事件やサリン事件が防げたのではないか」という質問に対し、法務省の松尾邦弘刑事局長がそれを認める答弁をした事実がありました。この事について、『産經新聞』が'99年5月29日号で大々的に取り上げたのは第2回の「主張9」で触れました。ところが、菅氏の見解に対し参議院議員の佐藤道夫氏らがそれは嘘だと既に反論していた(『朝日新聞』'99年5月27日号 『「権力」が聴いている』「オウム対策、本当に可能?」「法務省「抑止に期待」と答弁」「佐藤議員ら「うそ」と反論」を参照)にも拘わらず、『産經』や『讀賣』は完全に無視したのです。両紙はこれに限らず、反論自体を初めから無かったかのように無視する姿勢が目立ちました。
こうした手口は、実は今までは『朝日』がしばしば指摘されて来ました。それは今でも無くなった訳ではありません。しかし、それは残念ながら、どこでもやっている事なのです。『朝日』を批判する人はたいてい『産經』を賞賛しますが、同紙は特に盗聴法をめぐって大嘘が目立ちました。自分の支持する意見が書いてあるからといって、信用してはならないのです。まして、「この新聞に反論が載らなかったのは取るに足らない意見だったからだ」と考えたとしたらとんでもないことです。
また、国会で報道機関への傍受はしないとの答弁がありました('99年8月3日参議院法務委員会 松尾邦弘氏)。これに対し日本ペンクラブが「『報道機関』の範囲がはっきりしない」と質問状を出し、10月15日になって、「新聞社やテレビ局に所属しないジャーナリストも含まれる」との回答を得ました。また、2000年8月15日の盗聴法施行と同時に、国家公安委員会規則として「通信傍受規則」(条文はhttp://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%92%ca%90%4d%96%54%8e%f3%8b%4b%91%a5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H12F30301000013&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 参照。「犯罪捜査のための通信傍受に関する規則」http://www.courts.go.jp/kisokusyu/keizi_kisoku/keizi_kisoku_16/とは別なので注意)も施行され、
盗聴最小化について定めた同規則第六条の二に「報道の取材のための通信が行われていると認めた場合に留意すべき事項」が明記されました。警察庁の黒川智氏によれば、この規定は「法上特に傍受を禁止する規定は置かれていないが、報道の取材の自由を尊重する観点から」置かれたとしています(『警察學論集』2000年11月号「通信傍受規則の制定について」黒川智、6頁参照)ただし、「留意」であって、黒川氏も書いているように盗聴しないと言っているわけありません。
なお、賛成派の稲垣武氏は「暴力団関係者を取材した場合、警察に会話が傍受されてしまい、記者が警察に情報を売ったと疑われ、取材が出来なくなる」という批判(『毎日新聞』'99年6月3日号)に対し、
>ジャーナリストに取材秘匿の義務があるのは言うまでもないが、それは記者自身が
>取材源を外部に漏らさない義務であって、警察など外部が別の方法で取材源を
>特定し得たとしても、それはそれで仕方のないことではないか。
>(産経新聞社『正論』'99年8月号189頁)
しかしそれでは、警察の不祥事などの垂れ込みを盗聴された場合、どう仕様も無くなってしまいます。それとも『産經』は、そういう垂れ込みは警察に注進して握り潰すから平気だ、という事なのでしょうか。まさか、とは思いますが。
あるいは国会報道でも、自自公の強行採決批判を完全に無視し、また民主党円氏への野次を咎めるどころか、「対決法案の最終処理段階で守勢に立たされた」とひたすら与党を心配し、時間無制限の討論を認めた斎藤十朗参議院議長に対し、「議長不信任案を出したいくらいだ」という自民党議員の台詞を載せて批判する始末。(『産經新聞』'99年8月12日号「野党抵抗に与党守勢」)『産經』記事の掲載日、斎藤議長は投票時間制限を設ける事で野党牛歩の邪魔をしましたが、率先してこの様な無法を煽り立てたのですからどう仕様もない新聞……………いや、正直さは買えますが。
また、『讀賣新聞』の姿勢についても、魚住昭氏はこう指摘しています。
渡邉(引用者注:渡邉恒雄讀賣新聞社社長)が論説委員長に就任して以来、社説で前面に打ち出してきた反共・国家主義路線はすでに社会面も覆い尽くしている。平成十一年五月二十八日夜、衆院法務委員会で可決された通信傍受法案をめぐる読売の報道がそれをはっきりと裏付けた。翌日の朝日は「盗聴法」の危険性を指摘しながら賛成・反対両論併記の社会面だった。
それに対し読売は、
《(通信傍受法案)欧米では幅広く適用『必要最小限』の日本案》
《闇情報*T受ゴーサイン 『暴力団との戦いに必要』》
と賛成論一色。わずかに文中で「制度上の問題点も指摘され、適正な運用が今後の課題となる」と指摘しただけだった。元社会部員が語る。
「現場では反対派の動きも紙面に出そうとしたけど、編集局幹部から『反対論は要らない。載せる必要はない』と言われて激論になり、結局、上層部に押し切られてしまったようです」
八月九日に参院法務委員会で通信傍受法案が強行採決されたときも編集局長から「法に則った正当な採決だから強行採決という言葉を使うな」と指示が出て、結局、社会面には一行も記事が載らなかった。社会面トップで強行採決の模様を伝えた朝日とは好対照を見せた。
別の社会部OBが言う。
「社説で盗聴法案に賛成するのは、それは新聞社の主張だからそれでいいかもしれない。だけど、社会面では賛成もあれば、反対もある、それをどういう人たちがどう考え、どう行動しているのかを伝えるのが新聞の役目だ。あれだけ重大な事柄を社会面で一行も扱わないのはどう考えてもおかしい。会社人間はどうしても上を見てしまうからね。編集局全体が社長の存在に怯えて自己規制し、社内での言論の自由が無くなっていく。悲しむべきことだよ」
(『渡邉恒雄 メディアと権力』魚住昭著、講談社、税抜き1900円。375〜376頁より引用)
これがちゆ氏のいう「読売新聞は淡々と事実を報じていました」の実態です。
付け加えるなら、二〇一六年成立の盗聴法強化では、『讀賣』は『産經』以上に前のめりに推進しました。『讀賣』はNSAを始めとする"Five Eyes"盗聴網を肯定した上で、さらなる盗聴拡大をことある毎に主張しているのですから、恥も外聞もありません第7回参照)。
もう一つ残念だったのは、一様にインターネットへの偏見が強いことです。明らかに盗聴法最大の標的の一つにも拘わらず、マスコミはあまり報じてはいませんでした。(そう言えばパソコン専門誌は盗聴法をどう扱っていたのでしょうか?最近あまり見ていないので。)先に東芝に不良品の問い合わせをして「クレイマー(苦情屋)」と罵られ、その会話を録音してネットに公開された方がいました。「NEWS23」は盗聴法に反対した功績はあります。ところが同番組で筑紫哲也氏は、「(インターネットは)トイレの落書きに近い、という酷評もあります」とけなし(しかも伝聞形を使って逃げている)、「電話を傍受して、それを音で流すという場合に、傍受された側がそのことを知らないという一種の情報の不公平があります」と言いました。念のため断って置きますが、ここで言う「傍受」とは第三者の会話を盗み聞きする事で、自分自身の通話を録音する事を傍受とは言いません。そんな事だから、法務省に揚げ足を取られるのです! さらに賛成派の稲垣武氏は、電話や電子メール、FAXで報道機関に内部告発出来なくなると言う意見に、「本当に内部告発しようという強い意志があれば、手紙でもできる」(『正論』'99年8月号189頁)という。「電話や電子メール、FAX」がどれ程ありがたい存在か、稲垣氏にはまるで分かっていません。インターネットを殺すつもりですか。
その結果が、NSA、GCHQ、FSB(ロシア連邦保安庁)等による野放図な盗聴です。このまま稲垣氏のような主張を放って置けば、本当にインターネットは彼等に殺されてしまいます。
いちいち記事を挙げて行くと長くなるので、下に主な事件を挙げて置きます。これに関する各紙の記事を調べてみると良いでしょう。どの新聞が好意的に、あるいは批判的に取り上げているか。また同じ記事でも、どの新聞が派手に取り上げ、また小さく取り上げ、また完全に無視したのか。さらに、同じ事件を取り上げた記事にしても、見出しからして全然違う書き方をしている場合があります。確かにインターネットには信用ならない記事がたくさんありますが、現実の新聞でも、なまじ信用があるだけにインチキになかなか気づかない事があるのです。
それにしてもこれらのマスコミが、せめて'98年3月、盗聴法案が国会で出された時に批判を始めていれば、と残念でなりません。
○長尾立子法相、盗聴法案を含む組織対策法案を法制審議会に諮問。 '96年10月8日。
○法制審議会、法相の諮問を受けて盗聴法案を含む組織的犯罪対策法案の骨組みを決定。 '97年7月18日。
○寺西判事補の盗聴法反対告発をめぐる事件。 '97年10月2日、8日、'98年4月18日、5月1日、7月24日、12月2日。
○自民は、社民反対のまま盗聴法案を含む「組織的犯罪対策法案」提出。 '98年3月13日。
○「盗聴法・組織犯罪対策法に反対する市民と国会議員の集い」開催。 '98年11月17日。
○中村正三郎法相と杉浦正健衆院法務委員長、自民党の服部三男雄(みなお)法務部会長らは、盗聴法を含む組織犯罪対策3法案成立を最優先させる事で一致。 '99年 2月2日。
○法務委員会で自民党の菅義偉氏の「通信傍受法案が有れば坂本弁護士一家殺害事件やサリン事件が防げたのではないか」という質問に対し、法務省の松尾邦弘刑事局長はそれを認める答弁をした。 '99年5月21日。
○法務省刑事局はマスコミに対し、「盗聴法」との呼び方を止めるように要請。 '99年6月1日。
○松尾刑事局長を始めとする法務省幹部及び与謝野馨通産相等が主要マスコミを訪問。法案の趣旨や提案までの経過を説明して回った。 '99年6月4日より数日間。
○陣内孝雄(じんのうち たかお)法相はこの日収録されたテレビ朝日の番組「あまから問答」で、「横浜の坂本堤弁護士一家殺害事件は、この法律(盗聴法)があれば防げたと思う。」と発言。 '99年6月17日。翌日取り消し。
○東京・日比谷公園で盗聴法案反対集会。佐高信・田中康夫・宮崎学氏等の呼びかけで開催。民主党菅直人代表、共産党不破哲三委員長、社民党土井たか子党首、さきがけ武村正義代表、二院クラブ佐藤道夫代表、国民会議中村敦夫代表も出席。 '99年6月24日。
○社民党保坂氏、会話が盗聴された疑惑について、被疑者不詳のまま東京地検特捜部に電気通信事業法違反(通信の秘密の侵害)容疑で告訴。 '99年7月7日。
○野田毅自治相、記者会見で保坂氏盗聴疑惑について、組織的犯罪対策三法案成立を妨害しようとした者の仕業ではないかと指摘。さらに 「保坂議員にたいする盗聴は何の意味もない。」と言った。 '99年7月8日。
○盗聴法案審議中の参議院法務委員会で、公明党の大森礼子氏が前日の「NEWS23」に問題有りと指摘。法務省はこれを受けて、TBSに対し、スタジオでのやりとりに問題があるとして抗議。 '99年7月13日。
○社民党保坂氏らの呼びかけで、宮崎学・川田悦子・佐高信・小倉利丸・本多勝一氏らが盗聴法に反対する記者会見を行った。 '99年8月9日。
○参議院法務委員会で、盗聴法案が強行「採決」。 '99年8月9日。
○佐高信・辛淑玉・大谷昭宏・宮台真司・宮崎学の各氏は共同で「昨日の強行採決の暴挙・愚挙に関して」と題して野党、特に民主党と与党との馴れ合いを批判する声明を発表。 '99年8月10日。
○参議院本会議で、円より子氏(民主)に対するセクハラ発言騒動。 '99年8月11日。
○参議院本会議で斎藤十朗議長、野党の牛歩に対抗して投票時間制限を設ける。 '99年8月12日。
○盗聴法が成立。 '99年8月12日。
新聞記事は、事件当日の夕刊か一週間以内に出てくるはずです。ただし、寺西氏の記事のうち、'97年10月2日、8日の分は『朝日新聞』の投稿なので、これだけは当日付け(8日は別の事件もあったので翌日付け以降も)の同紙をご覧下さい。一部の記事はネットでも見られます。各紙のアドレスは次の通り。
朝日新聞 http://www.asahi.com/
中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/
東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/
毎日新聞 http://mainichi.jp/
日本経済新聞 http://www.nikkei.com/
讀賣新聞 http://www.yomiuri.co.jp/
産經新聞 http://www.sankei.com/
なお、最初に挙げた見出しですが、唯一「盗聴法」と呼んだ『朝日』は、衆議院で盗聴法案が通過した段階では、「通信傍受法案が衆議院を通過」という表現を使っていました('99年6月2日号)。それが見出しだけとは言え、「盗聴法」と呼んだのは、『朝日』の、せめてもの意地だったのかも知れません。かなしい。
………と思ったら、『朝日』の縮刷版を見ますと、「通信傍受法」に書き換えられているではありませんか!しかも一面トップから二番目に下げられています。何という腰の引けた新聞でしょうか。本当にかなしいです。